日本脳腫瘍病理学会

The Japan Society of Brain Tumor Pathology

“のうしゅよう”病理ってなに?

 脳腫瘍の病理的研究と最適な治療法の確立を目指します。

 わたしたちの体を作っている細胞の一つ一つには、それぞれに役目があり、またその場所によって様々な働きをしています。これら無数の細胞は自分自身を良い状態に保つと同時に、お互いに周囲の細胞と密接にかかわりあいながら、お互いの環境に最も良い状態を作りだし、即ち最適な“社会環境”を作り出しているのです。脳にも数百億個ともいわれる細胞がそれぞれいろいろな機能をもって活動していくとともにその部署によってはさらに高等な機能を周囲の細胞とともに作り上げて、わたしたちの意識や感情や体の動きを支配しています。これらの細胞がすべてうまく働いている時には脳の機能もよく、元気に活動できますが、一部の細胞が何らかの理由でその機能を失ったり、あるいは別の機能を示したりすると、とたんに脳の全体のバランスを失い、様々な障害を呈してきます。

 全く同一の人間が存在しないように、全く同じ神経細胞は存在しません。一見同じように見える脊髄の前角細胞はすばらしく進展した(時には1メートル以上)軸索と大きく拡がった樹状突起をもち、その接触点には無数のシナプスが形成されています。そして神経細胞に附随するグリア細胞であるアストロサイトとオリゴデンドログリアの細胞突起の末端の拡がりは想像をこえる、実にすばらしいもので、神経系にとり不可欠な重要な機能の場を形成しています。こうした脳を構成する精巧な細胞の腫瘍化が身体の他の組織の細胞の腫瘍化に比して独特なものであることは想像にかたくありません。

 脳は柔らかく全体が硬い頭蓋骨ですっかり囲まれていて、理想的に保護されています。しかし、頭蓋内に発生する脳腫瘍を始め、種々の拡大性病変が頭蓋圧の亢進をひきおこし、重篤な結果をひきおこし、死因ともなることは昔からよく知られていることです。そのため、脳腫瘍と、それに伴う脳浮腫は神経病理学のなかで最も重要課題としてとりあつかわれてきています。

 日常の臨床において、神経病理医の判断は患者さんの治療に直接大きく影響しています。たとえば、脳神経外科医の摘出した脳腫瘍を神経病理医が診断し、その診断名に応じて、臨床での治療方針が即座に決定されます。その決定は治療方針に多大な影響を与えますし、その後の患者さんの人生にもさまざまな意味で影響するほど重要なのです。

 脳腫瘍病理学は正常な脳組織の発生過程を基準として脳腫瘍をその組織学的所見から診断、分類することから始まります。これにつきましては神経病理医、神経内科医、放射線内科医をはじめ、神経科学の各分野の研究者たちにより、半世紀以上の累々とした研究が続けられてきています。脳腫瘍の原因、実体を解明し適切な治療、更にその予防が目的であります。現在の医学の進歩は目覚ましく、脳腫瘍病理学にも改革がもたらされてきています。たとえば、以前は様々な染色方法によって神経細胞を染め、その染まり具合によって腫瘍の性質を分類していました。最近は、この方法に加えて、分子生物学的手法の飛躍的な進歩に支えられて、モノクローナル抗体を用いた免疫組織学的変化や腫瘍の中に潜む遺伝子情報の解析を中心とする分子生物学解析診断法が駆使され、新しい体制が目指されています。

 脳腫瘍の病理学的研究の深さと広さは止むことを知りません。現在世界保健機構、即ちWHO(World Health Organization)による脳腫瘍分類が常に改変されていることもその一端です。

 脳腫瘍病理は脳腫瘍の臨床診断、治療に直結した重要な神経科学の分野です。

平野朝雄
The Harry M. Zimmerman Professor of neuropathology,
Montefiore medical Center,
Professor of Pathology and Neuroscience/
Albert Einstein College of Medicine, New York

 
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